ご挨拶

地球惑星科学専攻で学位を取得した皆様へ

大学院理学系研究科 地球惑星科学専攻
専攻長 井出哲

修士、博士の学位取得おめでとうございます。
簡素な式で2年または3年の課程を修了するという思いがけない事態に戸惑いもあることとは思いますが、学位取得がめでたいことに変わりはありません。

今まさに起きている社会の混乱について皆さんもいろいろ考え、判断しているでしょう。
理性と感情、アタマとハラ、スロー&ファーストシステムなど呼び名はいろいろですが、人は2通りの方法で判断をします。
昨今のウィルスに対する判断はかなり感情に依存したものです。頭で理解しようとしても直感的な恐怖にはかなわないし、そもそも生死にかかわる価値判断は理性だけではできません。

情報が氾濫する現代においても、多くの判断がハラで行われます。情報がいくらあっても、判断に使うのは興味のある手近なものだけになりがちです。
皆さんの中には学位研究の中で最適化問題を解いた人も多いのではないでしょうか?
多くの最適化問題では、グローバルな最適化のためには、一時的に見た目の最適化と逆行するプロセスを用いることが効果的です。
手近な最適化、つまりローカルな最適化に進もうとする強力なハラの判断を、あきらめずに抑えようとするアタマの動きがグローバル最適化には重要です。

そのとき理性的な頭の働きとともに大切なのは大局を見る俯瞰的な目です。
皆さんは既にそれぞれの分野で一定の成果をあげました。理学の学位記は、皆さんが十分に理性的な探求をしたという証明です。
その分野が大小さまざまなスケールを扱う地球惑星科学であったということは、俯瞰的な目を養うためにも役立ったはずです。理性的な思考力と俯瞰的な視野を今後も意識して養っていただきたいと思います。
そしてその能力がこれからの皆さんの長い人生の大切な判断において、十分に生かされることを願います。