地球惑星科学が対象とする領域は、地殻・マントル・コアから成る固体圏、大気・海洋から成る流体圏、固体圏と流体圏の境界領域に広がる生命圏及びその総体としての地球システム、さらに、太陽系を構成する惑星・衛星から宇宙空間にまで及んでいます。また、その研究手法も、自然の多様性・複雑性を認識する調査・観測,多様性・複雑性の中から、普遍性を抽出する実験・解析・理論、そして全体のシステムを統一的に理解するためのモデリングやシミュレーションなど多岐にわたっています。
このように領域的にも手法的にも非常に広範で多様な地球惑星科学の研究を総合的かつ効果的に推進するため、近年では、さまざまな専門分野の研究者及び研究技術者の連携による大規模な学際的研究プロジェクトが、国内的にも国際的にも益々盛んに実施されるようになってきました。
本専攻は、時間的にも領域的にも手法的にも非常に広範で多様な地球惑星科学の総合的研究と教育を効果的に推進し、それを支える各専門分野の基礎的研究を発展させると同時に、近年益々大規模化する地球惑星科学分野の学際的国際研究プロジェクトを中心となって担う研究者の養成を行っています。
近年の地球惑星科学の目覚ましい発展は、惑星周辺空間と地球表層環境と固体地球内部を相互に作用し合うひとつのシステムとして理解し、地球・惑星の形成・進化の歴史から未来の変動予測までを一連の時間発展過程として捉えることを可能にしつつあります。
このような科学的認識の変換と研究対象領域の拡大は、周辺科学技術の急速な発展と社会のニーズの増大という二つの研究環境の変化とも密接に関連しています。
周辺科学技術の革新による研究対象領域の拡大は、わが国においては地球環境衛星ミッション、月・惑星探査ミッション、宇宙ステーション開発計画、次世代スーパーコンピュータ計画、国際海洋底掘削計画などの国家的大規模研究プロジェクトの推進にみることができます。
このような学際的大規模研究プロジェクトが今後長期に亘って、地球惑星科学分野の高度な専門性を持つ研究型、技術型、および研究管理・調整型の多くの人材を必要とすることは明らかです。
また、地球惑星科学と人間社会との関係は従来にも増して密接なものとなりつつあります。
地震の発生や火山の噴火、異常気象などに関連した自然災害科学・予測科学としての側面、地球の温暖化や砂漠化、エルニーニョによる気候変動、あるいはオゾンクライシスといった環境科学としての側面などがその代表例です。
人間活動に重大な影響を及ぼすこれらの問題の究明は社会が地球惑星科学に課した使命でもあり、全地球規模での取り組みがすでに始まっています。こうした社会的要請に応えるためには、国際性を備えた、視野の広い、高度な知識と能力を持った多くの若手研究者および研究技術者が必要とされます。
さらに、社会一般や産業界においても地球環境変動予測、防災型社会設計、環境保全・環境診断といった新たな職種が登場してきており、地球惑星科学の応用分野として高度な専門性を持つ人材の必要性が高まってきています。