ご挨拶

地球惑星環境学科を卒業する皆様へ
「君たちはエクスプローラー」

理学部 地球惑星環境学科
学科長 髙橋嘉夫

卒業生の皆様、この度は無事にご卒業なされること、本当におめでとうございます。皆さんは理学部で、物事の理を突き詰めることを基盤にして、未知の事柄を解明していくことを身に着けたと思います。これから皆さんは様々な道に進まれると思いますが、理学部出身の人間として生きていく中で、こうした理学部魂をもって前に進んで欲しいと思い、以下の例えをしてみます。

現在の人間社会やその知の限界を大きなサークルに囲まれた領域とみなします。こうした人類の知が及ぶサークルの外側には、未知で暗黒の世界があります。理学研究(科学)とは、大航海時代のコロンブス(あるいは今ならはやぶさ2ですね)のように、この知のサークルの外側を探検し光を当てる営みであり、皆さんはそれを実践するエクスプローラーだと思います。エクスプローラー達は、知のサークルの外に何かを発見した時、それをサークルの中に持ち帰り、皆に伝えます(これは論文ですね)。その新たな知によって人類のサークルは拡大し、こうしたエクスプローラー達の発見の積み重ねで、人間の寿命は延び、移動可能な距離は長くなり、今の便利な世の中が実現されました。その功罪はともかく、こうした知の拡大の恩恵を受けて、今の我々は存在しています。

では将来の人類に目を転じると、今のCOVID-19の問題も然りですが、環境・気候変動・資源・災害などの問題は避けて通れません。かといって、2050年に100億の人口を数える人類にとって、これらの人を平等に生かすには、弥生時代に戻ることもできません。やはり、今後こうした人類を救えるのも、知の積み重ねなのだと思います。もちろん、人間のサークルの内側で、人間同士の交通整理やお金のやりとりの仕組みを作る法学や経済学などにより、新たな社会システムを構築することも重要です。しかし、やはり(応用分野も含む)科学は、今後の人類にとって、最後のよりどころであるに違いありません。

皆さんは、理学部での教育を通じて、エクスプローラーとなるに必要な論理的思考や様々な科学的手段を学んだと思います。是非、こうした武器を活かして、暗黒の世界に漕ぎ出し、新たな知を開拓していって欲しいと思います。それ自体、実は楽しい作業であると共に、その先に、未来の人類を助けるヒントもあるのだと思います。

そしてもう1つ、理学部での活動を通じて知り得たことは、仲間との協奏ではないでしょうか。知を極める作業は一人でもできますが、仲間との対話は自分だけでは届かなかった世界へ我々を導いてくれます。東大を出たみなさんは、単に知を極めるだけでなく、必ず各分野のリーダーになることが要求されます。そのような時には、仲間をリスペクトし切磋琢磨することで、個々の知をつなげたり、知を極める勇気を与えたりできるリーダーとなって下さい。皆さんの今後の奮闘を期待します。