学生の声

他大学から地球惑星科学専攻へ進学

青柳 雄也(宇宙惑星科学講座・修士2年)

はじめに

私は、学部時代は千葉大学理学部地球科学科に所属していました。卒業研究は地熱地帯にみられる変質を受けた鉱物について研究していましたが、徐々に地球や惑星の形成や成長に迫れるような岩石や鉱物も見てみたいなと感じ、他の大学ではどのような研究をやっているのだろうと気になり始めたのが、東京大学大学院地球惑星科学専攻に進学することになった最初のきっかけだと思います。ここでは他大学から東大に入った人の視点から、地球惑星科学専攻の入試、研究室訪問、入学後に感じたことなどを私の体験も踏まえて説明させていただきます。本専攻への進学を考えている方、特に他大学から進学してくる方に多少なりとも参考にしていただければ幸いです。

入試ガイダンスと研究室訪問

他の大学院にも興味を持ち始めて色々調べていると、東大地球惑星科学専攻の修士入学ガイダンスがあることを知りました。参加してお話を聞いてみると、さすがは東大だけあって教授陣も多いですし、幅広く様々な研究をされているなと感じました。院生の方のお話を聞く機会もあったのですが皆さん素晴らしい研究をされていて、私も東大という新しい環境で色々と経験し成長していきたいと思うようになりました。

まず始めにガイダンス試料やHPを参考に、研究室を調べてみました。その中で自分の興味のある研究を行なっている先生方にメールでご連絡し、研究室の訪問をお願いしました。私の場合は、鉱物学的な観点から研究をしたかったので、鉱物学がご専門の先生の研究室をいくつか見せていただきましたが、どの先生も好意的に受け入れてくださいました。後述しますが、小論文で進みたい分野について記述しなければならないので、試験を受ける前にある程度方向性は決めておいた方がいいと思います(といっても私もいくつかの研究室で迷っていて、結局小論文が曖昧な内容になってしまったのですが)。

院試について

ここからは実際の入試についてです。筆記試験は、専門科目、英語、小論文の3つがあります。私の受験した年度からはまた少し変わっていますが、数学、物理学、化学、生物学、地球科学からそれぞれ2~3問ずつ出題され、その中から計4題を選択する方式です。地球科学を選ばなければならないということはないので、学部時代に地球科学以外の分野を専攻していた人でも受験することができるようになっています。選択は事前に決めなくてはいけないものでなく、試験本番で好きな問題を選ぶことができますが、指導教員によっては受験要望科目を決めている方もいるので、その点は注意が必要です。先述のとおり、私は学部時代に岩石・鉱物系の研究をしていたので、地球科学と化学を選択しました。勉強の進め方としては過去問が最重要です。傾向と対策を練ることも大事ですが、問題に対して自分なりの完璧な解答を作成するということが一番勉強になります。その際、関連項目も同時にまとめていくといいと思います。調べても分からないところは同級生や研究室の先輩に聞いたり、先生に質問に行ったりしました。また在学中の大学の院も受験されるのであれば、その対策も並行して勉強するといいと思います。私が在学していた大学の院試は基礎的な内容が重視されていたので、その対策で基本的なところを覚え、東大の過去問に当たってさらに知識を深めるという形式で勉強していました。ところで、当たり前のことながら内部生は専門試験に対して相当有利です。ですが幸いにも地球惑星科学専攻の定員は100人近くあり、外部の人にとっても幅広く門戸が開かれています。ですので外部だから受からない、などと悲観する必要は全くありません。むしろ定員から言っても外部の割合の方が多いくらいなのですから。

英語の試験はTOEFL-ITPです。数はあまり多くはありませんが、専用の参考書が生協等で販売されています。Listening 、Structure 、Reading の3セクションがありますが、とりわけListeningに苦労した覚えがあります。前のセクションに戻って解答できない、メモを取ってはいけない、などいくつか特殊な点があるので、事前に準備しておかないと面食らうと思います。

小論文は大学院に入ってから進みたい分野と行いたい研究内容ついて記述します。これに関しては予め、原稿を作っておいて同様の流れで書けばいいので気持ち的には他の科目よりも楽かもしれません。ですが、小論文の内容はどのグループ(5講座のうち)の口述試験を受けることになるのかに大きく関わってきます。自分の希望したグループと、その小論文に書かれている内容と関係があると先生方が判断したグループの面接を受けることになるので、自分のやりたい研究を明確にしておく必要があります。とはいっても、私も当時は研究室をいくつか訪問した結果を踏まえて、鉱物学的な研究でさらにそこから惑星の形成や進化について考えられればいいなという方向性はあったのですが、隕石を対象にするのもいいし地球の石でもいいな、という曖昧な状態でした。そのため当然のことながら小論文の内容もあまり明確でないものになってしまい、結果として4つの講座の面接試験を受けることになりました。

面接試験は各講座の先生方が集まっている部屋を回り、先生方の前で院に入ってやりたい研究内容や卒論の内容を話します。質問の内容は記憶の彼方なのであまり詳しく書けませんが、筆記試験から期間は短いにせよ時間があるので、その間に考えをまとめておくといいと思います。

無事院試に合格すると、各研究室を訪問して所属する研究室を決めることになります。合格したグループの進路アドバイザーの先生が、小論文の内容などを踏まえて指導教員の候補を教えてくださいます。その先生方と個別にアポイントメントを取って、研究室を訪問させていただき、お話を伺うことになります。実際にお会いしてお話を聞いてみないとわからないことも多いでしょうし、実験室や研究装置を見せてくださったり、先輩方に質問できるようにセッティングしてくださった先生もいて、とても参考になりました。私自身は7人の先生方のところに伺わせていただいたので、色々とお話を聞くうちにどの研究室に行こうかと迷ってしまったことを覚えています。最終的には隕石の研究に魅力を感じ、隕石の鉱物学的研究を行なっている先生の研究室に行くことを決めました。それまであまり馴染みのなかった隕石ですが、隕石の物質科学的な研究から初期太陽系や原始惑星の形成時の情報を復元するという壮大なスケールに心惹かれました。ちなみに合格発表から指導教員の最終決定までは二ヶ月ほど時間があるので、その研究室に入ってどのような研究ができるかなどを十分に考えることができます。

東大に入って

東大に入ってから感じたことは、まず一つに実験設備や装置などの環境が整っているということです。専攻の人数も多いのでマシンタイムの問題も多少はありますが、メンテナンスもしっかりされており、実験や分析をするのに理想的な環境であると感じました。また必要な装置を利用するために、東大内の他専攻にお邪魔して貸していただいたり、外部の研究機関や実験施設に数日間出張して実験を行なうこともあります。

ゼミ・セミナーに関しては、おおよそ週一回、関連分野の先生やその学生が集まって研究発表や論文の紹介をします。大半の学生は2つ程度セミナーに参加しているようで、これに加えて各々の研究室内だけで行なうセミナーもあります。分野にもよると思うのですが、研究対象や手法は似ているけれど多少分野の異なる方々のお話も聞くことができるので勉強になりますし、また他分野の方に理解して頂けるように自信の研究内容を発表することはとてもいい訓練になります。

地球惑星科学専攻の院生部屋は一部屋におよそ8~10人が所属し、基本的に異なる分野、異なる講座の院生が混じって配属されています。そういった全く異なる分野の研究をしている人たちとも交流があるところも一つの特徴ではないかと思います。分野外の話を聞くことで新たな知識も得ることができますし、みなさん優秀な方々なので何かと刺激を受けることも多いです。

修士も最初のうちは授業に追われることになります。修士課程ではある特定の単位数まで学部の授業の単位を卒業要件に算入できます。そのため、地球惑星科学以外の分野から来た人が学部の授業を取って基礎から地球惑星科学を学ぶこともできますし、地球惑星科学を学んできた他大学生にとっても復習のために履修することができます。その点では、他大学からの進学生は履修科目の選択肢は割と広いはずです。内部生の話を聞くと、修士の授業科目だけでは研究分野と関係ない単位もとらないと履修要件が埋まらないとのことでした。

先にもお話ししましたが、私は今、隕石の研究をしています。隕石は原始惑星が現在の地球のように分化(地殻、マントル、コアといったように異なる層に分かれること)する前の、またはその途中や後の情報を保持しており、それを分析することで惑星の形成や進化、分化の過程などを理解する手掛かりとなります。特に私の研究室では主として鉱物学的な手法を用いて観察、分析をしています。地球・惑星物質の最小単位は鉱物です。鉱物は結晶構造や方位、組成やその変化、結晶集合組織や微細組織、共存する鉱物種との組み合わせなど、数多くの情報をもっています。それらの情報から鉱物が形成した時の環境や、出来てから鉱物が受けてきた物理学的・化学的なプロセスを復元することで、惑星の形成や進化、分化について明らかにしようとしています。

おわりに

最後になりましたが、私が所属する宇宙惑星科学講座では、宇宙空間や太陽系内外の惑星などを幅広く研究の対象としています。我々は隕石などの惑星物質を主に対象としていますが、他の研究室では探査機や観測機器で惑星や各種物理量を調べたり、プラズマ粒子や電磁流体のコンピュータシミュレーションや解析を行なったり、室内で様々な実験を行なったりと、さまざまな角度から研究を行っています。隕石に興味がある人、宇宙に興味がある人はぜひ宇宙惑星科学講座にいらしてください。

偏光顕微鏡写真
隕石薄片(Sahara99555)の偏光顕微鏡写真
反射電子組成像
隕石薄片(Kenna)の元素マッピング像(それぞれMg、Fe、Ca、反射電子組成像)