学生の声

他大学から東大へ

名越 丹理(地球惑星システム科学講座・修士1年)

はじめに

 私は首都大学東京の都市環境学部地理科環境コースから、この地球惑星科学専攻を受験しました。今このページを開いている皆さんの中には、東京大学という名前に躊躇してしまっている人もいるかもしれません。実際に私の周りにも、研究室を訪問する前からあきらめてしまった人がいました。そこで今回は、受験しようか迷っている方たち、具体的に何をすれば良いかイメージがつかめていない方たちの励みになるような内容を意識して、私の受験生活について振り返らせて頂きます。

研究室訪問

 今の研究テーマでもあるサンゴ礁の研究室が自分の大学になかった私は、早い段階から他大学の大学院を探し始めました。この地球惑星科学専攻の大学院説明会には学部3年生の6月の回に参加し、研究室はその段階で決めていたほどです。しかしその後専攻のホームページに発表されている入試内容と過去問を見て、それを解いている自分のイメージが持てず一度諦めてしまいました。他の大学への訪問や本を読むことで、やはりこの研究室でなければならない、と改めて決意を固めたのは3年生の10月頃だったと思います。

 実際に研究室訪問を行ったのは4年生の5月上旬と少し遅い方でしたが、丁度研究室に所属したばかりの修士1年の方々にお話を聞くことができました。研究室訪問は先生だけでなく、研究室全体の活動や雰囲気を知ることができるため、研究したい分野に複数先生がいらっしゃる場合は、それぞれを訪問させて頂いた方が良いと思います。また、具体的な試験対策(使用した参考書など)や、テスト対策のノート、授業のプリントなどを貸して頂き、試験に向けて自分が何を勉強したら良いのかやっとイメージを持つことができました。

大学院入試

 入試の筆記試験内容は、数学・物理・化学・生物・地球科学系から2科目と、TOEFL-IBTという形式の英語です。私は過去問を見て、数学・物理・化学は大学で学んでいないと難しい,という印象を受けたことや、研究室訪問の際のアドバイスから、生物と地球科学を選択しました。研究室によっては指定科目がありますので、各自で調べて頂けたらと思います。また基礎を固めることを進められていたため、高校の生物・地学の教科書を読みました。その他は1冊ずつ紹介された大学受験レベルの参考書を読み、問題演習は過去問で行い、補足として東大の授業のレジュメに目を通して試験に臨みました。結果的に理解しきれない部分も多々ありましたが、試験には十分対応することができたと思います。特に地球惑星システム科学講座を受験するために地球科学を使う方は、地球惑星システム科学専攻の先生方が出している「進化する地球惑星システム」(東京大学出版)という本を読んでおくことをおすすめします。

 TOEFL-ITP試験に関しては、リスニング・文法・長文ごとに問題集を買って対策しました。特に一般に実施されているTOEFL-IBTにはない文法は、しっかりと対策をとれば大きな得点源になり得ます。私は紹介された問題集1冊を何度も解き直して傾向をおさえました。リスニングと長文に関してはTOEFL-IBTでも十分対応できるので、とにかく数をこなすといいと思います。試験直前は、過去問を解いて本番に備えました。

 小論文と面接はセットと考えて対策し、小論文には今まで何をしてきたか,どうしてその分野に進みたいか,進むことができたらどのような研究がしたいかを、難しいことは考えずにできるだけシンプルに書きました。800字という文字数の中に収めることや面接で質問されることからも、内容はシンプルにしておいたほうが後々混乱しません。ただしいくらシンプルであるとは言っても、小論文は何度か書く練習をした方が良いでしょう。

ここまで勉強の仕方について書きましたが、受験期間中は教育実習や学芸員実習があったことや、自分の大学の大学院試験の勉強もあったこと、生物は高校で生物Ⅰの途中までしか履修していなかったことなど、心配事が多くとても不安だったことを覚えています。しかし、試験のことをとても丁寧に教えて下さった方々や親切にして頂いた方たちの思いを無駄にしないよう、じっくりと過去問の傾向を抑えて、決めたことを毎日少しずつ積み上げるように勉強した結果が、合格につながったのだと思います。 

指導教員の決定

 試験の結果、2つの講座から一人ずつ先生を紹介して頂きました。1つは元々目指していた研究室でしたので迷いはないと思っていたのですが、もう1つの研究室も卒論の内容(河川水の溶存成分と土地利用の関係について研究していました)とサンゴ礁のどちらも扱うことができ、とても魅力的でした。結果的には初志貫徹ということで元々目指していた研究室に決定しましたが、複数の口座に合格した場合は、紹介された先生を訪問し、様々な条件を元によく吟味した方がいいと思います。大学院前期課程は2年間しかありませんから、しっかりとコミュニケーションをとって効率よく研究を進められるよう、指導教員の先生との相性や研究室の雰囲気は、特に重視するべきだと感じました。

大学院での生活

 現在は今までとは異なる分野に進んだということもあり、授業を中心に基礎知識について日々勉強中です。しかし院生の役目は自分の勉強だけではありません。先生の手伝いやオープンキャンパスなどの学校行事も大切な仕事です。さらに私が所属している表層セミナーではM1のみで勉強会を行うなど、周りの方々はとても熱心で、常に良い刺激を頂いています。まだまだ着いていくだけで精一杯ですが、やらなければならないことはこれから増えていく一方なので、効率よくこなしていけるように頑張りたいと思います。今、他大学から受験しようと試験勉強と卒論の両立を頑張っている方々は、その日々をこなせたということが、入学してから最も必要なスキルであることを実感するでしょう。

おわりに

 私の経験を例にできるだけ具体的にこれまでを振り返ってみましたが、お役に立てたでしょうか。大事なことは①研究室訪問をすること,②その際に研究室の方々からしっかりとお話しやアドバイスを聞くこと,③それらのアドバイスをもとに過去問の傾向を掴み、効率の良い勉強を行うこと,の3つだと思います。英語などは中々点数がのびずに嫌になってしまうこともあるかもしれませんが、「自分はこれを研究したい」という気持ちを励みに、あきらめず最後まで頑張ってください。

最近実習先で拾った貝に入っていたヤドカリを、サンゴ砂で飼育し始めました。入る時も入ってからも大変な東大ですが、楽しいことも沢山あります。