地球大気環境科学講座(先端科学技術研究センター)
本研究分野は大気海洋科学講座(基幹講座)の中村研究室が先端科学技術研究センター(先端研)に移り2011年4月に新設された研究組織で,2014年9月に小坂研究室が加わりました.気候系の形成やその自然変動,それに伴う異常気象やその予測可能性,さらには将来の温暖化に伴う気候変化に関わる力学的・物理学的研究課題に,データ解析・力学診断や大気大循環モデル・気候モデルシミュレーションを通じて取組んでいます.地球気候に関わるこれらの研究課題に興味を抱く大学院生を歓迎します.詳しくはウェブサイトをご覧下さい.
本研究分野では,以下に述べるように,地球の気候系で起こる様々な時空間規模の多様な現象のメカニズムや予測可能性,それらの相互作用の解明を目指す研究を,観測データの力学的診断やモデルシミュレーションにより推進しています.
《気候系形成の科学》
❶夏季の亜熱帯高気圧の形成力学を,亜熱帯域の海陸加熱差への大気応答とそれに伴う大気海洋相互作用という新しい観点から研究している.❷各大洋における中緯度海洋前線帯に伴う急激な水温変化が,移動性高低気圧の活動のみならず,下層雲や対流性雲の分布,海上風の収束・発散や熱帯低気圧(台風)の構造に及ぼす影響を包括的に探求している.
《気候変動・地球温暖化の科学》
❸中緯度大気海洋結合の観点から大気大循環とその卓越変動の力学の再検証を進めている.特に,中緯度の暖流や大陸縁辺海からの熱や水蒸気の供給が,移動性高低気圧活動を通じて,偏西風ジェット気流の形成や「環状モード変動(北極振動・南極振動の本質)」の振幅や構造(成層圏・対流圏結合変動を含む)に如何なる影響を与えるかをモデルシミュレーションなどから探求している.❹北太平洋十年規模気候変動の定説を覆し,熱帯からの直接の影響は亜熱帯海洋循環系に留まる一方,北西太平洋の亜寒帯前線帯(黒潮・親潮合流域)に集中した海水温変動がアリューシャン低気圧の変動と結合した中高緯度独自の変動を含むことを示し,このメカニズムの解明に取組んでいる.❺近年の地球温暖化の停滞(ハイエイタス)が熱帯太平洋における十年規模の自然気候変動と人為起源の気候変化との相殺によって起こっていることを示し,このような自然変動と地球温暖化の競合によって全球および地域的・季節的に引き起こされる気候変動を気候モデルシミュレーションなどにより研究している.❻地球温暖化が東アジアの夏冬の気候にもたらす変化とそのメカニズムの解明に取り組んでいる.温暖化に伴って春一番が早く吹くようになる可能性を指摘した.また温暖化に伴う北極域・オホーツク海の海氷減少によるユーラシア・極東域への遠隔影響に着目し,気候モデルシミュレーションを用いて研究している.
《異常気象のメカニズム》
❼大気ロスビー波束の3次元群速度伝播を表わす診断法を開発し,気象庁の定例気候診断や異常気象分析検討会など国内外で広く活用されている.これにより,❽成層圏の波動擾乱が対流圏循環異常の発達に与える影響や,日本に寒波をもたらす対流圏循環偏差「西太平洋パターン」が北極成層圏にもたらす寒冷化などの現象を見出した.また,❾停滞性ロスビー波束の伝播阻害と局所砕波というブロッキング高気圧形成の新理論を提示し,この型のブロッキングが ❿日本に冷夏をもたらすオホーツク海高気圧や冬の寒波をもたらすシベリア高気圧などの地表寒冷高気圧を増幅させることを示した.⓫夏の小笠原高気圧と南海上の台風活動との結合変動「太平洋-日本(PJ)パターン」のメカニズムを,夏季気候系に卓越する「湿潤力学モード」の観点から探求し,数ヶ月前からの季節予測可能性や地球温暖化に伴う長期変調を調査しており,また⓬小笠原高気圧を変動させるもう1つの循環変動「シルクロードパターン」の力学も,アジアジェット気流に卓越する波状の「力学モード」の観点から探求している.以上の観点からシミュレーション結果を解析し,地球温暖化や氷期・間氷期サイクルに伴う大気・海洋循環の変化についても研究している.
アクセス
- 地下鉄千代田線・小田急線 「代々木上原」駅から徒歩12分
- 小田急線 「東北沢駅」から徒歩7分
- 井の頭線 「駒場東大前」・「池ノ上」駅からともに徒歩10分
※授業が行われる本郷キャンパスから約50分です.根津から代々木上原まで地下鉄千代田線をご利用下さい.この他,本郷三丁目・新宿西口間地下鉄大江戸線,新宿・東北沢間小田急線の利用も可能です.
※地球大気環境科学講座/気候変動科学分野は先端科学技術研究センター3号館4階です.