学際理学講座(JAXA・宇宙研究所)

 JAXA宇宙研 宇宙惑星研究グループウェブサイト

宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所(JAXA・ISAS)では,地球惑星科学,太陽圏物理学,天文学などの宇宙科学の各分野において,1)大気球・観測ロケット・科学衛星などによる観測事業,2)飛翔体搭載用観測機器の研究開発,3)データ解析・理論・数値シミュレーション・モデリングなどの研究を行っています.特に地球惑星科学関連の研究対象としては,惑星中層・上層大気・電離層,惑星磁気圏・太陽系空間,月・惑星・小惑星探査,太陽観測と広範囲に及んでいます.研究所設立以来,多数の人工衛星とロケットによって様々な観測を実施,その結果の解析結果が新たな知見と疑問をもたらし,それが次世代の計画を生み出すというサイクルで,宇宙科学の進展に貢献してきました.理学・工学の研究者が協力し,全国の研究者や大学院生と共同することで研究が推進されてきました.

これまでの科学衛星

最近の地球惑星科学関係の科学衛星としては以下のものが数々の科学的成果をあげています.その成果創出においては,大学院生が活躍していることは言うまでもありません.

Akebono GEOTAIL Hayabusa Kaguya Akatsuki

「あけぼの」「GEOTAIL」の両衛星は 20 年にもわたって電離ガスで満たされた地球周辺宇宙空間を継続観測しています.これらの観測期間は,太陽活動の11 年周期を超えるものであり,地球周囲の宇宙空間が太陽の影響下でどのように変動するのかを理解する上で,世界的に貴重な観測データセットを提供しています.特にGEOTAILは,世界が共同して整備した宇宙空間観測衛星網の一員としてもデータを提供しており,オーロラ爆発に象徴されるような,ダイナミックに振舞う宇宙空間ガス(プラズマ)の物理探求にも貢献しています.

「はやぶさ」は 2005 年に小惑星イトカワへ到着し,貴重な画像データを取得しました.また,イトカワ表面にもタッチダウンを行い,その際に取得したサンプルを,2010年6月,地球へと持ち帰りました.そのサンプルは地上の装置による詳細な分析を受けており,そこから太陽系の起源に関する新しい知見がもたらされることが期待されます.

「かぐや」は近年の月探査ブームの先陣を切った月周回衛星です(2009 年にミッション終了).月表面の詳細なイメージ・データを鉱物学的な視点から解析することにより,月形成に関する新しい知見をもたらしました.また,「かぐや」には月周辺宇宙環境を計測する装置も搭載されており,宇宙ガスと月表面が(磁場や大気のクッションが入ることなく,直接に)接触するという状況でのプラズマ物理に関しての全く新しい知見をもたらしています.

「あかつき」は,金星大気の循環メカニズムを理解することを目指す本格的な惑星気象学ミッションです.金星大気の超回転(スーパー・ローテーション:惑星そのものの自転が遅い金星で,上層大気だけが速く回転する現象)がどのように起こっているのか,が最大の問題です.

今後予定される科学衛星

地球惑星科学関係では,以下のような魅力的なミッションが予定されたり,検討されたりしています.その実行や成果創出において,大学院生の活躍が必須であることは言うまでもありません.

打ち上げ年が決まっているもの:
2014 年 「ベピ・コロンボ MMO」 水星磁気圏・内部太陽圏の探査

BepiColombo

太陽系内縁にある水星の探査は困難ですが,それに日欧共同でチャレンジするのが「ベピ・コロンボ」です.日本は,プラズマ観測がメインである MMO(Mercury Magnetosphere Orbiter,水星磁気圏探査機)を担当し,欧州が担当する MPO (Mercury Planetary Orbiter,水星惑星探査機 ) とともに水星という謎に満ちた世界を解明します.2011年3月に水星周回軌道に入ったNASA・MESSENGER計画との緊密な協力関係からも大きな成果が期待できます(ベピ・コロンボの水星到着は2020 年).

検討中のミッション:
2010 年代 月着陸探査計画・小惑星サンプルリターン・衛星編隊による地球磁気圏ダイナミクスの観測
2020 年代 火星探査・世界共同木星系探査計画への参加

小型衛星

本格的なミッションは時間がかかってしまい,大学院生のライフ・サイクルとは必ずしも合致しません.その一方で,現場を経験することはたいへん重要なことです.そこで,小型衛星というカテゴリーも ISAS では推奨されています.準備時間が短くて済む小型衛星でタイムリーな問題解決を促そうということです.最初の試みとして,オーロラ画像とそれを光らせているオーロラ粒子加速を同時観測する「れいめい INDEX」が2005 年に打ち上げられ,オーロラ科学にユニークな貢献をしています.今後展開される小型衛星シリーズの 1号機,2 号機には,それぞれ,「紫外線による惑星撮像」のための軌道望遠鏡,「地球周辺宇宙空間における相対論的粒子加速」を解明するプラズマ観測衛星が選定されており,地球惑星科学においても小型衛星が活躍する素地ができつつあります.

INDEX

JAXA宇宙研へのアクセス

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3)小田急相模大野駅より相模原駅行きバス.宇宙科学研究本部入口下車.宇宙科学研究本部まで徒歩 5 分