地球惑星システムの科学

地球惑星科学が対象とする太陽系空間、地球や惑星の電磁気圏、大気圏、水圏、生物圏、固体圏などの領域は、様々なフィードバックを通じた多圏間相互作用により、互いに影響を及ぼし合っていることが明らかになってきました。

地球や惑星をひとつの巨大システムとして捉え、その構造や挙動、時間発展をシステム科学的立場から理解する新しい研究体系“地球惑星システム科学”の構築が必要とされています。

地球惑星システム科学は、今までの学問体系の中に納まりきらない非常に新しい分野です。複雑な現象やシステムを研究するために、からま りあった“原因と結果”の糸を解きほぐすのではなく、さまざまな要因の間の“相互関係”に着目し、地球や惑星系の“全体としての働き”を理解しようとする のが特徴です。

■ 地球惑星システムの形成

  • 地球惑星システムを構成する諸要素やサブシステムはあらかじめ決まったものではなく、新しく形 成され、時間的に変化していきます。このような地球惑星システムのふるまいは通常のシステム科学にはない特徴です.私たちは宇宙での固体物質形成、それら を材料とした分子雲からの原始惑星系円盤形成、円盤内での惑星の形成、惑星表層での海・大気の形成、内部でのコア・マントル形成といったサブシステムの分 化の結果として起こる地球惑星システムの形成、時間発展およびその普遍性・特殊性を実験、分析、理論、モデリングの手法を用いて理解することに取り組んで います。
  • [ 地球大気・海洋・内部構造の起源 ]
    陸海空。一体どのようにして誕生したのだろうか
  • [ 太陽系誕生環境 ]
    太陽系が誕生した環境は普遍的だったのだろうか
  • [ 惑星形成の初期条件 ]
    原始惑星系円盤で物質がどのように進化し,多様な惑星をうむのか

■ 地球惑星システムの安定性

  • 地球惑星システム内部では、サブシステム間の相互作用が複雑に連結してフィードバックしあい、 全体としてある安定した状態を保ちます。安定状態は決してひとつではなく、複数の定常解が存在し、例えば、エネルギーバランスを考えると、惑星表層は全く 氷床のない状態、部分凍結の状態、全球凍結(スノーボールアース)の3つの状態を取り得ることがわかっています。地球惑星システムが取り得る複数の安定状 態およびそれを支配するサブシステム間のフィードバックを理論、モデリング、野外調査試料の分析など多様な手法を組み合わせ、明らかにすることを目指して います。
  • [ ハビタブルプラネット ]
    生命を育む惑星の秘密はなにか
  • [ スノーボールアース ]
    氷漬けの地球も地球システムの安定状態のひとつ
  • [ マントル活動のリズム ]
    マントルの活動はコアと表層環境をつなぐ

[右] 惑星システム形成時の巨大衝突。海洋の存在が衝突による大気の散逸率を大きく変える。[左] 宇宙での固体物質の進化を実験室に再現。写真はガスから凝縮したケイ酸塩。

 

[左] ハビタブルプラネット。生命が存在できる惑星の条件はなにか。[中] スノーボールアース。[右] 表層環境やコアの活動と相互作用するマントルダイナミクス。

このページの先頭へ