太陽風加速

太陽風は、文字通り惑星間空間を太陽から吹いてくる風のことをいいます。 E. N. Parkerにより1950年代に理論的に予測され、後に探査機観測で その存在が証明された現象です。その加速機構の基本は熱加速であり、遠方の星間 空間よりも太陽コロナが高圧であることから風が吹き出していると理解できます。 しかし、 太陽風の発見後、より詳細な観測がすすむにつれて、ことがそう単純でないということが わかってきました。太陽風は大きくわけて「高速太陽風」と「低速太陽風」とがあり それぞれ異なった謎をもっています。 高速太陽風は約1000km/sec前後の速度をもち、太陽のコロナホール と呼ばれる個所から吹き出してきていることが知られています。この1000km/secという 速度は熱加速で予測されるよりも大きく、なんらかの追加エネルギー注入が 必要でそれが謎となっています。いまもっとも有力な説は、 太陽表面で励起された磁気波動 (Alfven波)がコロナ中を伝わりながらそのエネルギーを失って加速に寄与するという ものです。いっぽう低速太陽風のほうは約400km/sec程度の速度をもちます。 速度については熱加速で説明がつくのであるが、その出発点をたどっていくと 困ったことに、コロナ で閉じた磁力線の上空に行き着いてしまうことが知られています。コロナのような、 高電気伝導度のプラズマでは磁力線は、プラズマに「凍結している」(流れとともに 磁力線が運動する)から、一見静止している閉じた磁力線を横切る方向に流れを作るのは 困難なのです。

ULYSSESが観測した太陽風の速度分布

ULYSSESが観測した太陽風の速度分布(NASA提供)

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