マントルは、日常的な意味では固体の硬い石でできています。しかし、長い時間で見るとまるで流体のように振る舞います(このような物質の不思議な性質を研究する分野をレオロジーという)。 マントルは、マントル内での発熱やコアの冷却熱など地球内部の熱を地球外へ放出するために、ゆっくりとした速度で対流運動をしていると考えられています。
元々マントル対流は、ヴェゲナーの大陸移動説を受け、イギリスのホームズが大陸移動の原動力として提案したものです。 現在では、マントル対流がプレート運動と単純に対応しているとは考えられていませんが、マントルに対流が存在することや、マントルの対流が地球表面を含めた様々な地質現象を支配する重要な過程であることは間違いありません。 数値シミュレーション(図1)やアナログ実験(図2)によって活発に研究が進められています。 最近では地震波による地球内部構造(マントル・トモグラフィー)の研究の進展により、どのような対流運動が起こっているのか実証する道が開かれつつあります。
[ 図1 ] 中心方向に重力が働いている半円筒形内での高粘性流体による熱対流の計算例。赤い色が高温、 青い色が低温を表す。塊状の低温域(下降流)が見られる。流れのパターンは時間的に変化するが、熱的には下から入る量と内部での発熱分が上から出ていく量 とほぼつり合った状態にある。中心向き重力場のように実験室内では設定の困難な系でも数値計算では再現可能である。 [提供]柳澤孝寿(現JAMSTEC)
[ 図2 ] 上を冷やし、下を温めた容器内でのシリコン油による熱対流。感温液晶を封じ込めたマイクロカプセルを分散させ、場所による温度の差を色の違いとして可視化 している。青っぽいほうが高温、赤っぽいほうが低温である。上下の温度差を大きくとれば、計算機では再現できないような強度の乱流状態でも実験によってそ の特徴を調べることができる。[提供]柳澤孝寿(現JAMSTEC)