高温高圧の世界 - 地球惑星内部の物質科学 -

地球や惑星の内部は、我々の常識の通用しない高温高圧の世界です。地球は、ケイ酸塩を主成分とする岩石惑星です。岩石中のケイ素は、地球表層部では 4 個の酸素に取り囲まれる 4 配位と呼ばれる状態を取ります。 4 価のケイ素にとって 4 配位状態が有利であることは容易に想像可能です。 しかし、圧力が 25 万気圧(地下 700 km)に達すると、結合エネルギーの観点からは不利と考えられる 6 配位状態へ変化してしまいます。上部マントル・下部マントル境界で観測される地震波速度や密度の急激な増加は、この 4 配位から 6 配位への構造変化のためであると考えられています。一方、木星は水素を主成分とするガス惑星です。 水素は、常温常圧では 2 原子分子の気体ですが、木星内部のような超高温高圧下では液体の金属になってしまいます。 木星探査で観測される磁場は、液体金属水素の流動により生成されていると考えられています。

地球や惑星の内部において、何故、我々の常識とかけ離れた『不思議』な状態が実現するのでしょうか? 熱力学の言葉を用いて簡単に説明するならば、自由エネルギー G=U+PV-TS を考えた場合に、我々の世界は主に内部エネルギー U に支配されているのに対し、地球惑星内部の世界は、PV や -TS、つまり温度や圧力により大きく影響を受けているからということになります。 高温高圧状態における物質の振る舞いについては、レーザー加熱式ダイヤモンドアンビル装置(写真1)や内熱式マルチアンビル装置などを利用して研究が進められています。 実験技術が進歩すれば、近い将来、外殻電子だけでなく内殻電子の寄与するような超高圧下における化学結合の研究も行われるようになるかも知れません。

 

[ 写真1 ] レーザー加熱式ダイヤモンドアンビル高温高圧発生装置

[ 写真1 ] レーザー加熱式ダイヤモンドアンビル高温高圧発生装置

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