地球のコア (核) は、大部分が液体の状態にあり、大変に流動しやすい性質をもっています。そのため、地球の冷却によって熱対流運動が駆動され、秒速 0.1 mm 程度の流れが生じていると考えられています。またコアは金属 (鉄合金) からなりたっているので、電気を通しやすい性質もあわせもっています。コアがもつこれら二つの性質は、地磁気の生成と深いかかわりがあります。
一般に、電気伝導度の高い物質が磁場中を動くと、電磁誘導の原理によって電場が生じ、電流が流れます。これは発電機 (ダイナモ) の原理です。地球のコアでも同じことが起こっています。すなわち、磁場中を液体の鉄が熱対流運動することで、コアに電流が流れ、新しい磁場が生み出される のです。 このような、「磁場+液体鉄の運動 → 電流 → 新しい磁場」という連鎖によって磁場が維持されるしくみのことを「地球ダイナモ作用」といいます。 わたしたちが地表で観測する地磁気の主成分は、コアのダイナモ作用によってつくられたものなのです。
地球ダイナモ作用の素過程には、地球の自転運動や、ローレンツ力によって磁場が流れに及ぼす反作用など、さまざまな効果があり、かつそれらが複雑に絡み合っています。現在、おもに数値シミュレーションによって、地球ダイナモ作用を含めたコアの活動を再現する研究がなされています (図1)。この分野では、たとえば地磁気の強度や方向の時間変化の原因、磁極の逆転 (図2) の原因やその頻度についてなど、まだまだ未解決の問題が山積しています。
コアの中心部には、内核と呼ばれる固体の領域があります。内核は、地球の冷却によって液体の鉄が固化したもので、現在もなお成長し続けてい ると考えられています。内核が存在することによって、コアの中の流れが制御され、ダイナモ作用や地磁気にも影響が及ぶ可能性が指摘されています。地球の歴史上、内核がいつ誕生したのかは定かではありません。
[ 図1 ] 地球型ダイナモの数値計算例。外側の球面がコア表面、内側の球体が内核。自転軸は図で上下方向である。内核表面が加熱されることで、外核の流体は熱対流運 動を起こす。赤道面上の矢印は、生じる流れの方向を示している。また赤道面上の赤い部分は磁場強度が強い領域をあらわす。北から見て時計回りの渦(高気 圧)に磁場が閉じ込められていることがわかる。生成される磁場は、自転軸に平行な双極子磁場で近似される。コアの中をらせん状に周回するトロイダル型の磁 場(青い磁力線)と、赤道面を貫くポロイダル型の磁場(赤い磁力線)の二種類の磁場が存在することがわかる。
[ 図2 ]過去1000万年間の地磁気の極性の逆転史 (データは Cande & Kent, 1995 より)。横軸は100万年を単位とする年代。左端が現代で右にいくほど過去にさかのぼる。黒い領域は磁極の向きが現在と同じであったとき、白い領域は現在 とは逆向きであったときをそれぞれあらわす。過去における地磁気の極性は、岩石のもつ残留磁化の解析などから推定される。地磁気は過去に何度も逆転し、そ の逆転間隔は一定でないことがわかる。海洋底の岩石にこのような磁場の逆転がテープレコーダーのように記録されていたことが、プレート・テクトニクス導入の大きなきっかけとなった。地磁気の逆転のメカニズムは、地球ダイナモ研究で解明すべき第一級の問題である。