ゲラー ロバート学科長からのご挨拶 〜想定外のことを想定する〜

 地球惑星物理学は、文字通り、物理学的手段を使って地球と惑星を理解しようとする学問です。物理が大好きで、地球及び惑星について強い好奇心を持っている学生の進学を大いに歓迎します!

 

 私ごとで恐縮ですが、1973年にカリフォルニア工科大学地球惑星物理学科を卒業して、1977年に同大学大学院で学位を取得しました。恩師の金森博雄先生(地震学)は1959年に東京大学理学部物理学科(地球物理学課程)(当時)を卒業されました。金森先生は寺田寅彦の孫弟子で、私は(アメリカ人であっても)東大の知的伝統に繋がっていることを誇りに思っています。また私は1984年、東大の任期無し外国人教員の第一号として採用され、この夏でもう29年になります。

 

 私が学部を卒業した後の約40年間で、地球惑星物理学はめざましく進展しました。固体、大気海洋、超高層、惑星のそれぞれの分野で観測・実験・数値計算・理論の側面で、日本を含め世界中の研究者が素晴らしい研究成果を上げました。しかしまだまだ面白くてしかも大切な研究課題がたくさん残っています。

 

 ただ今後の研究課題に挑むためには、多くの場合幅広い知識が必要です。例えば、最下部マントルを理解するためには、地震学、マントル対流、地球化学、地球電磁気学、地球物質科学についての知識が必要です。

 

 ベテラン研究者であっても、5年毎に知識の半分ぐらいを補強しないと、研究の最先端には残れません。私どもの学科では幅広い基礎教育を行うだけでなく、必要に応じて、自らが新しいことを学ぶ能力や主体性を身に付けられるようにしています。

 

 地球惑星物理学は、基礎研究だけではなく、社会にとって重要な応用研究でもあります。例えば、地球温暖化、地震防災対策、資源開発における物理探査があります。基礎をしっかり理解し、課題を自ら整理することができ、しかもコミュニケーション能力がある人材は、大学、研究所、企業などにとって貴重な存在です。高度成長時代とは異なり、これから大学を卒業する人たちは激しい変動を伴う人生を経験するでしょう。それに対し一言アドバイスをさせて頂くとすれば、「想定外のことを想定する」能力を身につけることです。

 

 みなさんのこれからの人生には何の保障もなく、やり直しもできません。でも私たちは、40年後に、 “地球惑星物理学科へ進学して良かったな”と思ってもらえるような教育を提供することを目指します。ぜひ一緒に学び、楽しみ、挑戦していきましょう。

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