テーマ:深層海洋大循環の駆動メカニズムの謎に迫る
氏名:桑原 將旗(2012年度進学)
担当教員:日比谷 紀之・田中 祐希
【内容】
海洋深層には1000年以上の年月をかけて全球を巡る大循環が存在しています。この深層大循環の主な湧昇域は北太平洋であり、湧昇を引き起こすのはスケールの小さな乱流混合であると考えられています。実際の深層の状況を観測するのは困難であることから、深層循環は主に数値シミュレーションによって調べられています。今回私は、北太平洋のトレーサー分布とそれに基づいて推定される海水年齢分布が乱流混合の強さを表す鉛直乱流拡散係数の分布に強く依存することに着目し、現実の深層循環と海水年齢分布とを維持するのに必要な乱流混合強度の分布を数値実験によって調べました。鉛直拡散係数の分布を様々に変化させた実験を行った結果、従来トレーサー分布に基づいて北太平洋東部に存在すると考えられてきた深層水の湧昇域は、実際は北太平洋西部に集中していることが初めて明らかになりました。この結果は、トレーサー分布に基づいて流れ場を推測する従来の手法がいかに危険であるかを強く示しています。
【感想】
本格的な数値実験を行うのはこの研究が初めてでしたが、教員や大学院生の助けにより、初めは何となくだった研究の進め方が、次第に手に取るように分かってきました。また、実験を始めると、思いもよらぬ発見があったので驚きました。最後に、発表のまとめ方や論点の絞り方などを指導教員から手取り足取り教えてもらい、今後のプレゼンテーションの参考になりました。