1:地球環境変動と生命の大量絶滅
地球史においては、さまざまな地球環境変動が生じました。なかでも、生命の大量絶滅が生じた古生代/中生代境界(P/T境界、約2億5000万年前)や中生代/新生代境界(K/T境界、約6500万年前)に何が起こったのかを解明することは、地球環境の振る舞いや生命の進化を理解する上で非常に重要です。このような大規模な地球環境変動は、気候システムや物質循環システムの変動と密接に関係しています。そこで、気候や物質循環の数理モデルを用いて過去の地球環境変動を復元し、そうした地球環境変動の原因と性質を明らかにしようとしています。
2: スノーボールアース・イベント
地球史において、地球全体が凍結するという、極端な寒冷化が何度か生じたらしいことが分かってきました。これは「全球凍結(スノーボールアース)仮説」と呼ばれるもので、いまから約6億5000万年前、約7億年前、約22億年前に生じたと考えられています。これらの時期には、赤道域の大陸も氷に覆われ、海洋表層1000mも完全に凍結したらしいのです。意外なことに、地球大気が酸素に富むようになったのは全球凍結イベントの影響ではないか、という指摘があります。さらに、真核生物や多細胞動物の誕生にも全球凍結イベントが関係していたのではないか、という議論もあります。つまり、全球凍結イベントは破局的な地球環境変動であると同時に、大気や生命の進化とも深く関係していた可能性があるのです。私たちは、全球凍結イベントの実態やその原因、酸素濃度増加との関係などについて、海外学術調査や岩石試料の化学分析、数値シミュレーションなど多角的なアプローチを用いて明らかにしようとしています。
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